SANUをつくる人 vol.5|山頂よりも、その過程を愛する建築|Puddle代表・加藤匡毅
建築
#デザイン

SANUをつくる人 vol.5|山頂よりも、その過程を愛する建築|Puddle代表・加藤匡毅

⼈と⾃然が共⽣する社会の実現を目指し、リジェネラティブなビジネスに取り組むSANU。その活動は、ブランドコンセプト「Live with nature. / 自然と共に生きる。」に共感し、ともに歩むパートナーたちの存在に支えられています。「SANUをつくる人」は、SANUの大切な仲間である彼らにスポットライトを当てる特集。〈SANU 2nd Home〉がどのような思想のもとに生まれているのか、その一端をご紹介します。 第5回は、オリジナル建築シリーズ第6弾となる新建築モデル〈HIKE〉を設計した建築・空間設計事務所〈Puddle〉代表の加藤匡毅さん。空をテーマとした〈SKY〉に続き、加藤さんによる新しい建築が誕生しました。 その名は、〈HIKE〉。山頂よりもその過程を愛する”ハイキング”を着想源とした建築です。その建築に込められた想いを尋ねました。

「過程」に価値を見いだすということ

山頂はわかりやすいゴールだ。 けれど、心に残るのは、その道のりだったりする。

〈HIKE〉という名前には、山頂という到達点ではなく、そこへ向かう「過程」にこそ価値を見いだすという想いが込められている。

「家族や仲間と過ごす空間は、ひとつづきであってほしいと思っています。ただ、それは必ずしも同じ平面である必要はなくて、ハイキングのように登っていくこと、降りて行くことで、景色や関係性が少しずつ変わっていき、気づきや会話が自然と生まれていく。そんな体験を建築としてつくれないかと考えたのが出発点でした。」

登る。立ち止まる。降りる。その一連の流れは、ハイキングという行為そのものに重なる。効率よく一直線に進むのではなく、揺らぎを含んだ過程を味わうこと。〈HIKE〉は、そんな時間のあり方を受け止めるセカンドホームとして構想された。

「ここで過ごすひとときが、あらかじめ用意した予定やTo Doリストをこなすためだけの時間にとどまらず、ふとした会話や気づき、発想が積み重なり、それがやがて日常やファーストホーム(自宅)へと還っていく。
ときには頂上にたどり着かなくてもいい。途中で目的が変わってもいい。まっすぐではない道のりを楽しむ感覚を、ここで取り戻してほしいと思っています。〈HIKE〉は、そんな歩み方を受け止める場所でありたいと思っています。」

スキップフロアという「道中」

〈HIKE〉は、2階建ての構成の中に4つのスキップフロアを組み込んでいる。家の中に生まれる小さな上り下りが、滞在そのものを「ハイキング」のような時間へと変えていくのだ。

「南側の入り口から数段上ると、1階のダイニングに出ます。中央に大きなテーブルとソファ、壁側にキッチンを置いています。ここでは北側に面したテラス越しに浅間山が広がります。

そこから中2階へと上がると、今度は南側の出窓から田園風景が見える。さらに2階の寝室へ上がると、同じ北側でも高さと角度が変わり、浅間山の見え方がまた違ってくるんです。」

登るたびに、景色が変わる。立ち止まるたびに、距離が変わる。
その小さな変化の積み重ねが、滞在を「ハイキング」のような時間へと変えていく。

なぜスキップフロアなのか。

「単純な2階建てでは足りなかったんです。上下の動きが“体験”になるには、もう少し高さの重なりが必要だった。登って、少し視界がひらけて、また登る。その繰り返しの中で、気持ちや景色がゆっくり変わっていく。そのリズムをつくりたかったんです。」

一気にたどり着くのではなく、少しずつ高さを重ねていくこと。家の中を移動すること自体が、滞在の一部になる。〈HIKE〉は、平面で完結する建築ではない。 歩き、立ち止まり、また歩くことで、少しずつ完成していく建築だ。

個の空間と、つながりの気配

「食や会話を囲む場所を中心に据えたいと、いつも思っていて。その中心がありながらも、それぞれが個になれる場所が、離れていても立体的につながっている。そういう空間に、ずっと憧れがありました。」

〈HIKE〉では、空間を明確に仕切る壁はない。距離や高さの違いによって、それぞれが個の時間を持ちながら、ゆるやかに気配を感じられるのだ。

その背景には、加藤さん自身の幼少期の記憶がある。

「僕が小さい頃に家族と暮らしていたのは、団地のようなマンションでした。部屋に入れば、すべてが同じフロア。平らな空間の中で、自分なりの居場所を探していました。日の当たる場所だったり、落ち着ける隅だったり。階段のある家や、自分の家とは少し違うつくりの家に行ったときのことを、よく覚えています。ほんの数段上がるだけで、すごくワクワクしたんです。」

〈HIKE〉の空間構成には、そんな原体験が重なっている。どこか秘密基地のような、心をくすぐる感覚だ。

「リビングの有機的な三角形の開口から、見ようと思えばお互いの姿が見える。声をかければ、きちんと届く。でも、ずっと顔を合わせているわけではない。そんな距離感にしたかったんです。

たとえば、朝。
キッチンで朝食の準備をしていると、食器の触れ合う音が、やわらかく響く。しばらくすると、トントントンと小さな足音が聞こえてくる。子どもが目を覚まし、少しずつ動き出す気配だ。
『起きなさい』と呼ばなくてもいい。心地よい気配で自然と目が覚める。窓から少し顔を出して、『おはよう』と声をかける。その場所の空気を感じながら、自分は別のことをしている。そんな関係がいいなと思ったんです。」

個の時間を持ちながら、気配はゆるやかに重なっていく。〈HIKE〉は、干渉しすぎず、離れすぎない。 そんな距離を自然につくり出す建築だ。

壮大な山と、人の営みのあいだに

〈HIKE〉の舞台は軽井沢。南に田園、北に浅間山を望む土地。加藤さん自身が、家族で移住をして5年目となる軽井沢で過ごす日々の中から〈HIKE〉は生まれた。

「一般的に住宅を建てる時は、日が燦々と入ってくるように南側に開きますよね。でも、ここ軽井沢においては必ずしもそうではないようです。軽井沢では浅間山が北側に見えるので、“どの景色と長く向き合うか”を考えた時に、北側に開くことが多いと聞いています。」

〈HIKE〉は、浅間山を望む北側にひらかれている。けれど、視線は山だけに向いているわけではない。南側には田園が広がり、畑には人の手が入り、季節ごとに表情を変えていく。

「この場所は、心に余裕のあるときに通る道でした。急いでいないときほど、浅間山が驚くほど美しく見える。ただそれは、自然に佇む山ではなく、畑や人の営みの向こうに立つ山だった。その景色が、すごく好きだったんです。」

「北側では浅間山をのぞみ、南側には人の営みが広がる。ここで過ごす時間の中で、『この山を見ながら、誰かが食べるものを育てているんだな』と感じてもらえたらうれしい。風景の奥にある暮らしに、目を向けてもらえたらという思いがありました。」

悠久の時間を刻む山と、日々の営み。そのふたつのあいだに、〈HIKE〉は佇んでいる。

時間とともに風景になる素材

土地との関係性は、使用する素材にも表れている。

「外壁のほとんどに、地元・長野県産の杉材を使っています。夏は涼しく、冬は厳しく冷え込む。この土地の気候の中で育った木は、やはりこの土地にいちばん自然になじむと思うんです。時間が経つにつれて、色がゆっくりと変わり、少しずつ周囲の景色と溶け合っていくことを期待しています。」

出来上がった瞬間が完成ではない。やがて色を深め、周囲の森や空と呼応しながら、この土地の一部になっていく建築だ。

光と風を取り込む、〈SKY〉からつながる物語

〈HIKE〉は、加藤さんがSANUとともに歩んできた建築の延長線上にある。

「最初に手がけた〈SKY〉は、太陽を中心に東西へシンメトリーに広がる、開いていく手のような建築でした。空からの光を大きく受け止める、力強いかたちだったと思います。
軽井沢では、目の前に浅間山という雄大な存在があります。その前では、強いかたちを主張するのではなく、風景に呼応するように佇む建築がふさわしいのではないかと感じました。」

同じ設計者でありながら、土地とともに建築の姿勢は変化する。

〈SKY〉が“広がる建築”だとすれば、〈HIKE〉は“重なる建築”だ。

光と風を受け止めるというテーマは変わらない。けれど、その向き合い方は、より静かに、より内側へと進化している。

「過程」を共有することで、絆が深まる場所

「家族だけでなく、家族のように親しい友人や、仕事を通じて家族のような関係になっている人たち。あるいは、これから家族と呼びたいなと思っている人たちと、絆を深める場所にしてほしいと思っています。」

急がず、まっすぐでもなく、けれど確かに前へ進んでいく時間をともにする。

そのひとときが、せわしない日常の中で忘れかけていた、家族や仲間を愛する気持ちや、小さな幸せに気づく豊かさを、そっと思い出させてくれるはずだ。

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