SANUをつくる人 vol.6|冒険は、ここから始まる。|ADX・安齋好太郎
建築

SANUをつくる人 vol.6|冒険は、ここから始まる。|ADX・安齋好太郎

〈MOSS〉を手がけた、SANU執行役員 CPO - Architecture(Chief Product Officer, Architecture)・安齋好太郎さん。建築に込めたのは、「冒険したくなる場所」をつくりたいという想いでした。MOSSの設計思想や届けたい滞在体験について、安齋さんの子どもの頃の原体験も交えてひも解いていきます。

MOSSの設計思想につながる、子どもの頃の原体験

子どもの頃、誰に教わるわけでもなく、夢中になっていたことはありませんか。

安齋さんにとって、それは「秘密基地」でした。公園の片隅や、おばあちゃんの家の押し入れ。何もない場所なのに、自分だけの居場所を見つけたような気がして、胸が高鳴ったと振り返ります。

石を拾うことも、虫を追いかけることも、すべて小さな冒険でした。そして、秘密基地は、思いきり遊び、少し勇気を出して自然の中へ飛び出して、また安心して帰ってこられる場所。そんな子どもの頃の原体験が、MOSSの設計思想に大きく影響しているそうです。

子どもの頃のように、好奇心のまま動き出せる場所

大人になると、いつの間にか冒険心をしまい込んでしまいます。

冒険というと、山に登ったり、川を下ったりといった特別な体験を思い浮かべるかもしれません。気づけば、そんな非日常ばかりを「冒険」だと思い、日常の中で新しいことに挑戦することさえ、ためらうようになっていきます。

「ちょっと怖いなと思った瞬間、それが冒険の始まりなんです。」と安齋さんは言います。

虫を触ってみること。少し森の奥へ踏み込んでみること。岩場をよじ登って景色を見ること。そんな身近な一歩が、私たちが忘れている冒険の始まりなのかもしれません。

だからこそMOSSで目指したのは、子どもの頃の秘密基地のように、好奇心の赴くまま冒険に出かけ安心して帰ってこれる場所をつくること。

MOSSで過ごす時間が、自然の中で小さな冒険を重ねるきっかけになる。そんな想いが、この建築には込められています。

過ごし方を考えて、自然の一部として建てた建築

安齋さんは、自身を「建築家というより、ものづくりをする人間」だと話します。

建物そのものではなく、その先でどんな時間が流れるのか。自然の中でどんな体験が生まれるのかまで考えることが、ものづくりだといいます。だからこそMOSSで目指したのは、自然の中にただ建物を建てることではなく、自然の一部として繋がる体験をつくることでした。

その考え方は、MOSSの細かな設計に表れています。

例えば、窓。都会では、外からの視線を気にしてカーテンなどで隠すことについ意識が向いてしまいますが、MOSSには、自然に意識を向けるための仕掛けが施された大きな窓が2つあります。
光や風、季節の変化を感じられるように、自然の風景を切り取るような窓。そして、思い立ったらすぐに外の自然にアクセスできる出入り可能な窓。

このように、キャビンの中で過ごす人と、目の前に広がる自然を主役としたシンプルな室内になっています。

そして、MOSSを象徴する凹凸のある屋根。一見すると特徴的なフォルムですが、原点にあったのは、雨を受け止める一枚の葉っぱでした。

「大きな屋根だと、雨は一気に流れ落ちて地面を削ってしまいます。でも森では、葉っぱが雨を受け止め、幹を伝って少しずつ土へ還していく。その自然の仕組みを建築にも取り入れています。」

このような、自然のメカニズムを取り入れた建築のこだわりを通して、新たな視点や気づきが得られるかもしれません。

自然を感じ、自然へ踏み出したくなる場所をつくる。安齋さんの想いは、木にも、屋根にも、窓にも、MOSSを形づくる細部の一つひとつに込められています。

自然の中で、安心して冒険を楽しむための場所

安齋さんは、MOSSを「自然の中のベースキャンプ」だと表現します。

山へ行ってもいい。川へ行ってもいい。草むらへ足を踏み入れてもいい。汚れたら帰ってきて、温かいシャワーを浴び、家族と食卓を囲む。帰る場所があるから、人は安心して冒険へ向かえる。

MOSSは、自然の中で快適に過ごすための建物ではなく、未知の景色へ誘い、新しい体験へ背中を押してくれる、大人の秘密基地のような存在なのです。

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